2010/08/17

冥王と獣のダンス

上遠野 浩平, 緒方 剛志 (5)
5いつか続編を…。
4未来のどこかで運命が出会う
5ファンタジーの良作
5ぜひオススメします!!
5とにかく読んで下さい。

先日の機械仕掛けの蛇奇使いと比べると、上遠野サーガ歴は数千年前になります。と言っても、ブギーポップの時代から見れば途方もないくらい未来のお話です。(…簡単に未来といって良いのかどうかも怪しいけどね)

僕はバード・リスキィ。僕が生きているのは、奇蹟軍と枢機軍が果てのない戦争をいつまでも続けている世界。特殊能力者“奇蹟使い”である僕と妹のアノーはこの愚かな時代を変えるべくある計画を実行したが、それは僕らの予測を超え、戦場で敵同士として出会った若者と少女の数奇な運命を導くことになる。少女の名は夢幻。彼女は十七歳の戦略兵器。そして若者は報われぬ一兵士に過ぎなかったが、実は彼、トモル・アドこそが僕らの戦争世界の運命を握っていたのだった。―これは戦い殺しあい、出会ってすれ違う人々と夢をなくした機械達の叙事詩。悪夢と未来を巡るこの凄絶な舞踏会から、僕らは逃れることができるのか…。

というのがあらすじ。
枢機軍は前世界の遺産がはき出し続けるリサイクル兵器を使い、奇蹟軍は一握りの奇蹟使いと呼ばれる能力者を使いいつ終わるともしれない戦争を続ける世界。
このお話も上遠野サーガでは後期に位置する作品ですが、上手いこと繋がってるんですねぇ。

プルートゥが一体何のために作られたのか、その辺は別作品の ナイトウォッチ3部作で明かされることになります。が、よくよく調べてみるとナイトウォッチ3部作よりもこの作品の方が先に刊行されているんですね。読む順番としてはどちらを先に読んでいても問題ないかと思います。
あるいはブギーポップシリーズを読んでさらに、ビートのディシプリン、それからヴァルプルギスの後悔 <3>まで読んだ人は、上のあらすじの名前のところで”ピクピク!”と来るかもしれませんが、それだけです。

なので、この作品もほぼ独立した上遠野サーガの1冊の短編小説と思って良いかと思います。
難しく考えずになんかすごい一目惚れの話を読むと良いよ;p

この作品も機械仕掛けの蛇奇使いと同じく、プロットはブギーポップ以前にあったようです。
ただ、蛇奇使いのような希望の種を蒔く終わり方ではなく、ちょっとそれは悲しすぎるよと思っちゃうような終わり方ですが、まだまだ続きもありそうな話です。 が、販売からすでに10年が立っているので直接の続編はもう無いでしょうね。
このサイドストーリーとして枢機王狙撃という作品があるようですが、残念ながら雑誌掲載で単行本化されていません。

上遠野サーガにしては珍しく、圧倒的な存在が出てこない話です。…もちろん奇蹟使いとか手に負えないほどの能力者が出てきてどうのこうのするんですが、話のスポットは主人公と“根こそぎ”の二人に当てられていて、それ故にあの終局へと向かってしまうのかと思うと…
この作品の登場人物も自分たちの世界がどうなっているのか分かっていないので、読み手側としてもその辺意識しなくて良い、ライトに読める作品です。

(やっぱりスーパーアドバンスの能力名は、最初の“あの人”の影響を受けてるのかな?)